茶道具のひとつである「茶筅」について
茶道具のひとつに数えられる「茶筅」について、歴史や概要、茶道における役割や手入れ・扱い方を解説していきます。
「茶筅」について調べている方は是非参考にしてください。
茶道具の一つ「茶筅」の概要
茶筅(ちゃせん)とは、抹茶を点てる際に使う専用の道具です。
抹茶をかき回したりねったりするのに使う道具で、ほとんどのものが竹で作られています。
用途によって穂先の本数は様々ですが、外穂と内穂を合わせて128本が標準とされています。
濃茶をねるときは穂数の少ないものを、薄茶を点てるときは穂数の多いものを使います。
穂先は力を入れて使うと簡単に曲がったり折れたりしてしまうので、初めて使う際は加減を知ることが重要です。
茶筅の歴史
今から500年余り前の室町時代の中頃のことです。
奈良水門町に住んでいた入道宗砌(そうぜい)は、当時流行していた連歌や和歌に大変優れており、また、勅筆流書道の達人としても有名でした。
宗砌は、近くに住む称名寺ゆかりの僧である村田珠光と歌を通じた厚い親交がありました。
珠光はある時、後に茶道となる、茶の葉を粉末にして飲むことを考案しました。
珠光は茶の葉の粉末をかきまぜるための道具が必要になり、その製作を親交の深かった宗砌に依頼しました。
宗砌は苦労をしながらようやく道具をつくりあげ、それが茶筌の始まりとなりました。
その後、珠光は京都にある珠光庵に移りました。
当時の帝である後土御門天皇が珠光庵に出向いた際、珠光は帝に宗砌が作った茶筌をお見せしました。
帝はその着想と精巧さに大変関心した様子であったといわれています。
宗砌は以後、奈良の高山の城主一族にだけその製法を伝えました。
これがもとで、現在も茶筅の国内生産の9割が奈良の高山産になっています。
高山では茶「筌」という字を用いるのが一般的です。
茶道における茶筅の役割
茶筅は茶道において粉末のお茶を点てるときに使われる代表的な道具の一つです。
お茶とお湯を均一に混ぜる役割を持っています。
形状が、お菓子作りや料理においてホップクリームなどを混ぜて作る際によく用いられる泡立て器に似ていますが、茶筅を使用する目的は泡を立てるためではありません。
お茶を点てる際に出る「シャカシャカ」という静かな音は、茶室にいる方々の心を落ち着かせるという役割もあるようです。
また、茶筅はお茶を点てる道具として使われていますが、伝統的工芸品としての側面もあります。
日本を代表する文化の一つである茶道に欠かせない、歴史の深い美しい茶筅はその製作技法の精巧さから工芸品としても人々に愛されています。
茶道における茶筅の扱い方(作法)
茶道には表千家と裏千家があります。
茶筌の基本的な使い方について、それぞれの作法について紹介します。
茶筅で、茶碗の中を「一」の字を書くように振ります。
「一」の字を書くように振るときは、表面を素早く泡立てるように茶筅を動かしてください。
表千家では茶筌を寝かすようにして振ります。
あまり泡立てず、水面が半月状に膨らんだ状態が美しいとされています。
裏千家では、茶筅を立てて振ります。
そうすると、水面にたくさんの細かい泡がふっくら立ちます。
次に茶筅で「の」の字を書くようにまぜますと、泡が茶碗の中心に集まり見た目も美しくなります。
このきめ細かく泡立ったお茶は口当たりもがなめらかでやわらかく、まろやかな味わいを楽しむことができます。
茶筅の手入れ・保管方法
茶筌を使う前は茶筌通しをします。
まず、穂先が折れていないか目で見て確認をし、軽く水をくぐらせます。
次に茶碗にお湯を注ぎ、茶筅を手に持って浸します。
そのまま右へ左へ手首をひねりながら茶筅をお湯の中で振って、最後に「の」の字を書くように茶筅を回してお湯から引きあげてください。
茶筅を使った後は茶筌すすぎをします。
茶筌通しで行ったように茶碗にお湯を注ぎ、茶筅を湯の中で振って、最後に「の」の字を書くようにして引きあげます。
茶筌すすぎは茶碗をすすぐのと同時に遅れてきたお客様にもこの茶筅でお茶をまた点てられることを示す心遣いの意味もあります。
使い終わったら、風通しのよい場所でしっかり乾かしてから、温度や湿気の変化の少ない冷暗所に収納してください。
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